「あの辺りにはどんな魚がいるのかねえ? 」
「渦潮のおかげで魚はいないんじゃねえかな? 」
東の大陸の北側にある国カラジウム。
その国の北端、海岸の波打ち際で男達が話し合っていた。日に焼けた肌は黒く日焼けしており、背中も腕も汗で光っている。
二人ともまだ若いようだが逞しい体つきをしていた。一人は立ち上がって海を眺めているが、もう一人は漁業で使うのだろう、網の繕いをしていた。
二人とも漁師だった。
カラジウムの北側の海は潮の流れが西から東で、この海岸から彼らが小船で漁に出ると必ず東へ向かって進む事になる。海岸の辺りからは潮の流れはそんなに早くはないのだが、そこから西は非常に強く、潮の流れに逆らって小船を進めることはできなかったからだ。その強い流れは海岸の西端辺りから北東へ向かって流れているので、その流れから北へ進むこともできなかった。
この東の大陸の北西にはエルフの国、フェレーラ王国のある島がある。
ところが、島を囲む海には数ヶ所に渦潮があり、船でフェレーラに渡ることは不可能と言われていた。
勿論そこへは漁に行けない。行った者もいなかった。
渦潮はフェレーラの南にだけでなく、西にも東にも北にもあるとのことだった。世界の地図の海にもきちんと渦潮の位置は書き込まれていた。
そうしたことがあったため、出身地のフェレーラからエルフ達はどうやって他の大陸に渡ってきたのだろうと大陸の人々は不思議がっていたのだ。
エルフは昔から各大陸に少数ながらも住んでいたので、もしかすると大昔には渦潮はまだ無く、今大陸で見かけるエルフ達はその頃に大陸に渡ったエルフたちの子孫なのだ、と、多くの人は結論付けていた。
或いは、エルフは海を渡るのに魔法を使うのだ、と考える者もいる。魔法を使えば渦潮は関係なく進めるだろうと。
こうした考え方があったためか、昔話に出てくるエルフは空飛ぶ船で大陸を渡ったり、まるで翼獣人の様な翼を生やして飛んでいたりする。
また、時々とても古い遺跡などから発見される不可思議な物。道具のようにも見えるが一体何に使うのか想像もつかないようなものが見つかることもあった。偉い学者などは、そうしたものを利用して便利な道具を作ることもあった。学者達は、昔は今と違った文明があり、これらの道具を使って便利に暮らしていたのではないか、と考えている。
それを使ってエルフは大陸に渡り、数々の遺跡を残したのだ、と考える者もいた。
尤も、二人の若い漁師はそうしたものには縁が無く、エルフを見たことすらなかった。
何時の時代に作られたのか世界の地図はあったので、渦潮の先に島があるということもそれから知ることができていたが、カラジウムの漁師達にとって渦潮は越える事ができないものだったため、その先の海で漁をしたいなどとも思うことは無かった。
若い漁師だからこそ、ふとそんなことが気になったのだろう。
「・・・さてと。終ったぞ。これでまた夕方の漁に使える。」
網の繕いをしていた漁師がもう一人に声をかけた。
「おう。じゃあ帰るか。今日は天気が良すぎるからな。休んどかないと夕方の漁の時間になっても寝過ごしそうだ。」
そう言って南中の、ほぼ真上にある太陽を見上げた。
カラジウムは赤道上に位置していたため、真昼間の時間帯は非常に暑い。そのため漁は午前中と夕方に行われていた。早い時間に日が昇り、ゆっくりと日が沈むため、12時少し前から3時過ぎくらいまではお休みタイムなのだった。
二人は網を畳むと船の甲板に置いて、日よけの木々がたくさん植えられている集落のほうへ帰って行った。
「渦潮のおかげで魚はいないんじゃねえかな? 」
東の大陸の北側にある国カラジウム。
その国の北端、海岸の波打ち際で男達が話し合っていた。日に焼けた肌は黒く日焼けしており、背中も腕も汗で光っている。
二人ともまだ若いようだが逞しい体つきをしていた。一人は立ち上がって海を眺めているが、もう一人は漁業で使うのだろう、網の繕いをしていた。
二人とも漁師だった。
カラジウムの北側の海は潮の流れが西から東で、この海岸から彼らが小船で漁に出ると必ず東へ向かって進む事になる。海岸の辺りからは潮の流れはそんなに早くはないのだが、そこから西は非常に強く、潮の流れに逆らって小船を進めることはできなかったからだ。その強い流れは海岸の西端辺りから北東へ向かって流れているので、その流れから北へ進むこともできなかった。
この東の大陸の北西にはエルフの国、フェレーラ王国のある島がある。
ところが、島を囲む海には数ヶ所に渦潮があり、船でフェレーラに渡ることは不可能と言われていた。
勿論そこへは漁に行けない。行った者もいなかった。
渦潮はフェレーラの南にだけでなく、西にも東にも北にもあるとのことだった。世界の地図の海にもきちんと渦潮の位置は書き込まれていた。
そうしたことがあったため、出身地のフェレーラからエルフ達はどうやって他の大陸に渡ってきたのだろうと大陸の人々は不思議がっていたのだ。
エルフは昔から各大陸に少数ながらも住んでいたので、もしかすると大昔には渦潮はまだ無く、今大陸で見かけるエルフ達はその頃に大陸に渡ったエルフたちの子孫なのだ、と、多くの人は結論付けていた。
或いは、エルフは海を渡るのに魔法を使うのだ、と考える者もいる。魔法を使えば渦潮は関係なく進めるだろうと。
こうした考え方があったためか、昔話に出てくるエルフは空飛ぶ船で大陸を渡ったり、まるで翼獣人の様な翼を生やして飛んでいたりする。
また、時々とても古い遺跡などから発見される不可思議な物。道具のようにも見えるが一体何に使うのか想像もつかないようなものが見つかることもあった。偉い学者などは、そうしたものを利用して便利な道具を作ることもあった。学者達は、昔は今と違った文明があり、これらの道具を使って便利に暮らしていたのではないか、と考えている。
それを使ってエルフは大陸に渡り、数々の遺跡を残したのだ、と考える者もいた。
尤も、二人の若い漁師はそうしたものには縁が無く、エルフを見たことすらなかった。
何時の時代に作られたのか世界の地図はあったので、渦潮の先に島があるということもそれから知ることができていたが、カラジウムの漁師達にとって渦潮は越える事ができないものだったため、その先の海で漁をしたいなどとも思うことは無かった。
若い漁師だからこそ、ふとそんなことが気になったのだろう。
「・・・さてと。終ったぞ。これでまた夕方の漁に使える。」
網の繕いをしていた漁師がもう一人に声をかけた。
「おう。じゃあ帰るか。今日は天気が良すぎるからな。休んどかないと夕方の漁の時間になっても寝過ごしそうだ。」
そう言って南中の、ほぼ真上にある太陽を見上げた。
カラジウムは赤道上に位置していたため、真昼間の時間帯は非常に暑い。そのため漁は午前中と夕方に行われていた。早い時間に日が昇り、ゆっくりと日が沈むため、12時少し前から3時過ぎくらいまではお休みタイムなのだった。
二人は網を畳むと船の甲板に置いて、日よけの木々がたくさん植えられている集落のほうへ帰って行った。