渦潮とエルフの島
「あの辺りにはどんな魚がいるのかねえ? 」 「渦潮のおかげで魚はいないんじゃねえかな? 」 東の大陸の北側にある国カラジウム。 その国の北端、海岸の波打ち際で男達が話し合っていた。日に焼けた肌は黒く日焼けしており、背中も腕も汗で光っている。 二人ともまだ若いようだが逞しい体つきをしていた。一人は立ち上がって海を眺めているが、もう一人は漁業で使うのだろう、網の繕いをしていた。...
View Article古森
その森は、この世界で一番古い森と伝えられている。 それは旅人を拒む森。 森に入り真っ直ぐ歩いているつもりでも、出口はいつでも森の入り口。 元の場所に出てしまう。 森の中に入るとまるで日の光が届かない夜のように暗くなる。 木々がうっそうと重なり繁り、森の中に日の光は届かない。 しかしそれは、人が森に入って真っ直ぐ進んでいるのに元の場所に戻ってしまう理由とはならなかった。...
View Articleプロローグ ~ 御前会議 ~
朝の光が木々を照らし、その光を弾く夜露が木々の瑞々しさを際立たせている。 その中を通る通路を白い姿が歩いていた。 青銀の長い髪を揺らして進むのは、とんがった大きな耳が特徴のエルフの少女だった。 身に纏っている細身のドレスも白いため、揺らめく陽炎のようだ。 少女の後ろから大股に追いついてくる姿があった。 黒っぽい焦げ茶の髪に同じ色のヒゲを生やした背の高い、がっしりとした体躯の壮年の男だ。...
View Articleはじまりの島1
この星の世界地図は、四つの大陸に囲まれた『オルト海』を中心に描かれる。 地図を作成する場合、各国がそれぞれ自国を中心に描くのが普通と考えられるがそれにも拘らず、この星のどの国で作られる地図も全て『オルト海』を中心にしている。尤も、その描き方が各大陸の姿や位置関係をわかり易く描けるため、との通説があり、皆それで納得していた。...
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